山霧は 身捨つる覚悟 問うて消ゆ

山道の下りは早い
振り返ると
3時間前にその頂にいた山とは信じられないくらい遠くなった
40年ぶりの剣岳
深い谷からわいた霧がその姿も隠そうとしている
その霧の濃さにふと寺山修司の句が浮かぶ

マッチ擦る 束の間海に 霧深し 身捨つるほどの 祖国はありや

この句には下敷きになった次の句があるとされている

一本の マッチを擦れば 海は霧

しかし、寺山の句はこれを読む者の心情に応じて
様々な感慨や解釈を可能にする点で下敷きの世界をさらに拡げた

自分は何を目指し、何のために生きてきて
さらにこれからをどう生きて行くのか、
常に心を離れない難題を突きつけてくる

8月
既に山には秋の気配

何のため 身を捨つるやと 霧は問う

チングルマ 霧が湧こうと 晴れようと